まわりを山々に囲まれ、中心部には思(おもい)川が流れるのどかな田園地帯。そんな豊かな自然環境の中に吉田小学校はあります。鹿児島市の一番北側に位置する学校で、児童数は89人。今年で創立132年を迎えました。
16の町内会からなる吉田校区。遠くは6キロもの道のりを通学している子どももいるそう。「世帯数の少ない町内会のいくつかをまとめて…、という声もありますが、下駄履きで行き来できるところがコミュニティーの良さですからね」と言うのは、校区公民館運営審議会委員長の井前眞人さんです。
校区の行事も盛んで、先日は約200人が集い十五夜を楽しみました。当日は子どもたちと地域の大人が一緒になって、縄をない、まずは綱引き。その後は縄を土俵にみんなで相撲に汗を流したそう。
こうした縄をなうためのワラの提供をはじめ、給食センターを通じて、新鮮な野菜や米を届けてくれるなど、地域と学校の強い結びつきも、同校区の自慢です。「いつも学校のために、子どもたちのためにと考えてくださり、本当にありがたいことです」と同小学校校長の立久井昭雄さん。こうした取り組みには古い歴史があります。当時は不便な場所だったからでしょうか、いい先生を呼びたい、少しでもいい教育をと、住民が杉を植えて、学校のための資金源を用意したそう。これが現在の「財団法人佐多浦奨学会」。100年以上の月日を経たいまも続く“校区の力”だと教えてくれました。
地域の人々の温かな心と、豊かな環境の中で、子どもたちは伸びやかに育っています。昆虫や植物への興味も深い様子で、珍しいものをみつけると、博物館での勤務経験もあるという立久井校長に、「先生、これなぁに?」と持ってくるとか。もちろん自然も大切にしていて、親子で思川のゴミ拾いや草刈りをして美しい流れを守っています。
昭和41年に建てられた校舎で学ぶのも今年が最後になりました。来年からは吉田北中学校の隣で新しい歴史が始まります。この学校移転も地域の支えがあってこそ。「子どもたちのためなら」と先祖から引き継がれてきた田畑を手放しての実現です。新校舎への期待とともに子どもたちは、「いままでの学校を大切にしよう、思い出をたくさん作ろう」と、感謝の心で一日一日を元気に過ごしています。

